民俗資料の展示
2016年5月14日 Category: Myある記 Comment : 0
いきなりですが、博物館などに展示されている、民俗資料がこのところ気になっています。
石油などから作られる工業製品に囲まれた日常を送るわれわれは、手作りが多かった戦前・戦後の懐かしい品々にどう向き合えばいいのか、分からないままのように見えるのです。
例えば、何という名前だったのか、使い方はどうだったのかさえ曖昧になった道具もあります。“便利”を追求してきたわれわれは、そんな道具類が暮らしに不可欠だった時代から、ずいぶん遠い地点に来てしまいました(しかも急速に)。
大量生産・大量消費時代が到来して半世紀、かつての道具や技術の多くは現役を退き、屍を遺すのみになっているか、絶滅危惧種に近い状態に置かれているといえるでしょう。
しかし、社会を検証し、未来を予測するためにも、過去の暮らしやモノ、技術に学ぶことは多いはずです。また、地域の文化資産といえるそれらを保存し、次代に伝えていくことは、地域のアイデンティティを継承するという意味でも重要でしょう。
いっぽうで、地方の博物館の多くが財源・人手不足に苦しみ、調査や整理どころか、増え続ける品々を保管するだけで四苦八苦しているという状況があります(想像だけど)。
そこで、人手のかかる作業や調査業務などに、市民ボランティアの手を借りることも、課題解決のひとつではないかと考えます。高齢者の話を聞いたり、体験者に実演してもらうワークショップなどを、市民とともに開催すればモチベーションも上がるはずです。
使い込まれた道具類には、地域固有の歴史や文化、人々の物語が詰まっています。
ですから展示を考える上でもそのことを最大限考慮し、オブジェとしてキレイに並べることに腐心するのではなく、例えば実際に触り、使ってみることで理解が深まるような見せ方を工夫するとか、屋外体験と連携した展示を考えるとか、市民参画で進められたら素敵なことだと思うのです。
名護博物館展示室。1階では、歴史や民俗、自然といったカテゴリーで展示を分けるのではなく、それらが一体となった展示空間が作られています。
市民ボランティアも交えて手作りした部分も多いそうですが、手近にあるモノや知恵を出し合った課程が想像できるのも、魅力のひとつ。開館から30年以上経過して、ホコリや痛みが見えるのもご愛嬌と受け止めましょう。
屋我地島の製塩体験。名護博物館で力を入れている体験学習のひとつ。
屋内展示だけではなく、屋外活動の実践も重要でしょう。頭ではなく体を通して学ぶこと、実際に道具を使って体感することは、防災の観点からも重要だと思っています。
<三嶋>